静寂の意味

第五章 静寂の意味

 二十七人が目を覚ましたのは、黒田たちの船がその空間に入ってから二時間後だった。

 全員が健康だった。体の状態は何一つ変化していなかった。栄養も水分も、どこかで補給されていたらしく、飢えも渇きも感じていなかった。

 しかし全員が、共通の何かを経験していた。

 目が覚めた人間たちは、最初は混乱した。自分たちがどこにいるかわからなかった。しかし黒田が説明すると、一様に静かになった。そして、思い出したように言葉を話し始めた。

 船長の佐藤は言った。「夢を見ていた。長い夢を。言葉では言い表せない夢だったが、一つだけ確かなことがある。俺たちは、一人ではない、と感じた。宇宙に一人ではない、と」

 別の乗組員は言った。「音楽を聞いていた。ずっと音楽が流れていた。あんなに美しい音楽は聞いたことがない。体の中まで届く音楽だった」

 その空間を出るとき、振動がもう一度響いた。

 「最後に伝える。あなたたちが宇宙に出た理由を、私たちは知っている。探しているからだ。何かを探している。それは正しいことだ。ただ、探すときに、静けさの中に耳を傾けることを忘れないでほしい。音のない場所に、最も多くのことが語られている。」

 黒田はその言葉を、ノートに書いた。手で書いた。

 帰路、黒田は早川の隣の席に座った。

「どう報告する気ですか」と早川は聞いた。

「全部報告する。事実だけを」と黒田は言った。

「軍が隠してきたことも?」

「それも含めて。隠すことに意味があるとは思えない。あちらは危害を加えるつもりがない。そして、人類はそろそろ知る必要がある。一人ではないということを」

 早川はしばらく窓の外を見た。宇宙が流れていく。

「黒田さんは怖くないですか。これを公にしたら、どうなるかわからない」

「怖い」と黒田は正直に言った。「でも、隠した方が怖い。知らないままで進むより、知って進む方がいい。たとえそれが複雑な真実であっても」

「俺も同じです」と早川は言った。「あの光の向こうで感じたことを、言葉にするのは難しい。でも一つだけ確かなことは、あの静けさは空虚じゃなかった。静けさの中に、たくさんのものがあった」

 黒田はノートを見た。静けさの中に耳を傾けることを忘れないでほしい。音のない場所に、最も多くのことが語られている。

 地球まで、まだ二百時間以上の航行がある。黒田は報告書を書き始めた。事実を。観測を。そして自分が聞いた、静寂の意味を。

 宇宙は漆黒で、無音で、そして満ちていた。

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